売り文句で決めてない?羽毛布団を選ぶ前に押さえておきたい3つのポイント
羽毛布団を買おうと思ったとき、タグなどに表示されている項目が難しくてよくわからない…と感じた経験のある方もいらっしゃるかと思います。
実際に多数ある羽毛製品を見たとき、多くの品質表示や証明書などが付けられてはいますが、厳密にどれがいいか理解しきれず、結局割引や特典、売り文句に押されて購入してしまったというケースが多いかもしれません。
羽毛布団は見た目にはどれも同じように見えますし、内部の羽毛を直接見たりすることができないため、多少品質の悪いものでも見せ方によって上手く販売できてしまうものでもあります。
あまり信じたくはありませんが、それを利用した悪質な業者も中にはいるようです(一時はそうした悪質な訪問販売も横行していたといわれています)。
では、日々の睡眠にも大きく関わり、価格も決して安くない羽毛布団はどのように選んでいくべきなのでしょうか?
ここからは羽毛布団を構成する「羽毛」と「側生地」、側生地の構造である「キルティング」の3つについてそれぞれ説明していきます。少し項目が多いですが、羽毛布団の品質を知るためのキーとなる情報ですので、是非とも最後までご一読ください。
ポイント1.羽毛(ダウン)
羽毛布団の良し悪しは9割方この「羽毛(ダウン)」に左右されるといっても過言ではないかもしれません。
この最も重要なダウンを見極めるには、単純な種類のみならず「信頼の置ける産地であるのか」「保温力に影響する指標であるダウンパワーはどれくらいなのか」「どれくらいの量が使用されているのか」「匂いが出ないよう、また長期的に使用できるようしっかり洗浄が加工がなされているのか」といった点を見る必要があります。
1-1. ダウンの種類
まずはダウンの種類についてです。これを見ることでダウンの良し悪しをざっくりと判断することができます。
1-1-1. ダックとグース
羽毛布団に使用される羽毛は、比較的寒い地域に生息する水鳥から採られたものです。流通している羽毛布団の多くは「ダック」もしくは「グース」の羽毛が使用されており、一般的にグーズダウンの方が高品質とされています。
後述しますが、羽毛布団に使用される羽毛は羽毛ひとつひとつの「ダウンボール」の大きさが大きいものがより保温力が増すため良いとされているため、ダックより体の大きいグースの方が高品質と評価されているのです。
また、グースのダウンの方がより丈夫で長持ちしたり、羽毛布団に含まれるダウン以外の羽根(スモールフェザー)が細かく密着性が高いことも、グースダウンが優れているといわれる理由となっています。
1-1-2. マザーダックとマザーグース
同じグースや同じダックの中でも、成熟したものの方が体が大きくダウンボールも大きくなるため質が高いとされています。それが「マザーグース」や「マザーダック」と呼ばれるものです。
これらのことから、羽毛の種類による質の高さは下のようにダック<マザーダック<グース<マザーグースの順で段階付けられています。
実際に羽毛製品を見比べる時には、このダウンの種類が何であるのかということを後述する「ダウンパワー」と合わせて確認するのが第一といえるでしょう。
さらにこのほかにも、ダウンの色がホワイトかシルバー(グレー)かというのも日本では重要視されることがあります。羽毛そのものの色がどうであるかは、品質には本来影響しません。しかし「羽毛=白」という印象が強いため、多くの方がホワイトダウンを選ばれるようです。
ここまで一般的なダウンの種類について説明しましたが、最後に特殊なダウンである「スティッキーダウン」と「アイダーダックダウン」について説明しておきます。
1-1-3. 特殊なダウン① スティッキーダウン
スティッキーダウンは、スティッキネス(ねばり)のあるダウンで、普通の羽毛と違って羽毛が絡み合い、ねばり気があるように感じられるダウンです。
このねばりはダウンの長い毛足により現れ、これがあることによって一度温められた空気が外部に逃げづらく、高い保温力を発揮します。
より少ない量でも暖かさが出るため、一見布団の厚さが薄いのでは?と感じられることもあるかもしれません。
1-1-4. 特殊なダウン② アイダーダックダウン
スティッキーダウンと同様の性質を有していて、最高級羽毛と称されるのがこの「アイダーダックダウン」です。
アイダーダックは、アイルランドの極寒の地で、卵を温めるために自らの羽毛を利用して巣を作ります。アイダーダックダウンはこの巣からいただいた羽毛を使用した最高級品。
価格も掛け布団シングル1枚で数100万円にのぼるものもあり、価格的にも希少性も、まさに羽毛の最高峰といえるでしょう。
参考商品:アステ 京都発の快眠ショップ 最高級 アイダーダックダウン羽毛布団
1-2. ダウン産地
次にダウンの産地についてお話しします。実際、産地国によって水鳥の種類が大きく変わったりするわけではないので、どの国の羽毛かというのはそこまで重要というわけではありません(それよりも重要なのは結局個々のダウン自体のクオリティがどうかということです)。
それでも、管理がしっかりされているかどうかという点で比較的信頼されている国として、古くから羽毛布団を生産してきた東欧のハンガリーやポーランドがあります。
これらの国は長い歴史の中で確立された生産体制や品質管理体制が比較的しっかりとしていますので、アジアの新興諸国や中国で採れるダウンよりも信頼性が高く、品質も高いことが多いです。
産地と羽毛の質は必ずしも関係があるとはいい切れませんが、ひとつの目安として覚えておくと良いかもしれません。
1-3. ダウンパワーとゴールドラベル
ダウンパワー(dp)とは、JIS L-1903-2011のかさ高性試験方法で羽毛のふくらみ具合を数値化したもので、羽毛1g当たりの体積のことです。
これだけだと少し分かりづらいですが、数値としてはそのダウンが「どれだけのふかふか感があるか」を表したものと考えると理解しやすいかもしれません。
以前まで単位体積あたりどれくらいの高さがあるかという「かさ高(mm単位)」だけで表記がなされていたため、例えば180mmという表記を見て羽毛布団自体の厚さが180mm以上あると思い違いをしてしまったことのある方も多いかもしれませんが、ダウンパワーと布団そのものの厚さはイコールではありませんので覚えておくと良いでしょう。
この数値が大きいダウンを使用すると、軽いのに体積があり、ふかふかで暖かな質の高い羽毛布団をつくることが可能です。
上述した通り、ダウンボールが大きい成熟したマザーグースなどでは一般的にこのダウンパワーの数値が大きくなります。
ダウンパワーでは、この水鳥の種類以上に羽毛そのものの質を測ることができる基準といって良いでしょう(ダックより良いとされるグースでも、未成熟なグースと成熟したダックでは成熟したダックの方が質が高いといったこともあり得ます。その場合でも、このダウンパワーを見ればどちらの方がより優れたダウンなのかを見分けることができます)。
ただし、ダウンパワーはあくまで羽毛のふかふか感を表したものに過ぎないので、羽毛布団にする際にどれだけの量を入れるのかによって暖かさは異なるものです。
あくまで「ダウンパワーの高いダウンがどれくらい入っているのか」が最終的な羽毛自体の全体ボリュームとなります。
また、スティッキーダウンやアイダーダックダウンなど、ダウンパワーの数値としては現れませんが、ねばりがあることでより保温力のある羽毛布団が存在することも覚えておきたいポイントでしょう。
ゴールドラベルについて
羽毛布団製品を購入する際によく目にする「ゴールドラベル」は、日本羽毛製品協同組合が発行している証明書で「これくらいのダウンパワーがありますよ」という保証をしてくれるものです。
ゴールドラベルは4つの階級に分かれており、ダウンパワーの低い順にニューゴールドラベル、エクセルゴールドラベル、ロイヤルゴールドラベル、プレミアムゴールドラベルとなっています。
ラベルが上がると当然価格も上がりますが、それだけ軽くふわふわな羽毛布団ということです。
国内のほとんどの羽毛製品取扱業者はこのラベルを使用しており羽毛布団のダウンパワーを示す基準になるものですので、羽毛布団を選ぶ際は是非このラベルも確認してみてください。
1-4. 総充填量
羽毛布団に含まれる充填物(羽毛と羽根及びその他の塵など)の重量です。これに側生地の重量を合わせたものが最終的な羽毛布団の重さになります。
同じ羽毛でも充填量が少ないと保温力の低い布団となってしまいますが、多ければ暑すぎて寝づらかったり、重さで寝返りが打ちづらくなるなどマイナスになることもあるので、適正な重量の布団を選ぶことが重要です。
またダウンボールの大きな質の高い羽毛であれば、充填量が比較的少なくても十分なボリュームがあり暖かく、軽くて寝返りも快適に打つことができる羽毛布団を作ることができます。
1-5. ダウン率
羽毛布団には羽毛(ダウン)に加え、羽根(スモールフェザー)やごく少量の塵が入っています。
ダウン率はこの全てを合わせた中でダウンがどれだけ使用されているかを表したもので、高ければ高いほど軽くてふわふわで、暖かくへたりづらい羽毛布団となります(※ あくまで同重量、同サイズのものと比較した場合です)。
一般的に、このダウン率が50%以上のものを羽毛布団、50%以下のものを羽根布団と言い、もちろん羽毛布団を選んだ方が良いということになります。
ダウンパワーの項目で記述しましたが、羽毛布団は
・どれだけのダウンパワーのある羽毛が
・どれくらいの量入っているか
が決め手となります。
ダウンパワー・総充填量・ダウン率をしっかり確認し、本当に軽くて暖かい羽毛布団なのかを見極める必要があるでしょう。
1-6. 洗浄の質
質の低い羽毛布団が、保温力がないこと以外によく挙げられるのが「匂いがひどい」「すぐにへたってしまう」という点です。
羽毛布団の匂いは、羽毛を製品化する工程で行われる洗浄がしっかりとなされていないことで、羽毛や羽根に付着しているタンパク質が残ってしまい、それらが酸化し微生物が分解するなどして発生してしまいます。
また洗浄がしっかりされていると、質の低いダウンが除去されることによってへたりづらく、より長持ちのする布団ができ、長い目で見てもプラスとなる可能性があります。
そのためダウンがしっかり洗浄されているかどうかは、どのようなダウンを使用するかと同じくらい非常に重要なポイントといえるでしょう。
国内の羽毛製品業界では、河田フェザー株式会社の洗浄技術が圧倒的に優れており日本一ということでよく知られています。
1-7. 加工の種類
洗浄の段階や、洗浄後の羽毛に対して加工が施されているものも多くあります。
有名なのが「パワーアップ加工」です。これは羽毛を高温の釜で熱することによって洗浄や輸送の段階で潰れたりしてしまっていたダウンを本来以上のふかふかの状態に仕上げるという加工方法です。
この他にもタンパク質の酸化を防ぎ、匂いを防止するための「オゾン加工」などがあります。
このような加工がしっかり施されていれば、元は同じ羽毛でも匂いを気にすることなく長期間快適に使用することができますので、併せてチェックしてみてください。
ポイント2.側生地
羽毛を包み込む生地が「側生地」です。
側生地は羽毛布団の重さや、手触り、寝心地(カバーをかけて使用する方が多いと思いますので、実際にはカバーとのずれが生じないかなど)に大きく影響します。
重量に関係するということは、寝がえりの打ちやすさや身体への負担にも影響があるという点で重要となってきます。
この側生地は、羽毛が出てこないことはもちろんですが、軽量で肌触りの良い(滑りづらい)生地であることは特に重視して選びたいポイントです。
生地の素材には大きく分けて「綿」と「綿と合成繊維のハイブリッド」があり、それぞれにも多くの種類が存在します。側生地はこの素材を選択することが最重要であるといっても良いでしょう。以下でそれらの種類と特徴を説明します。
2-1. 綿素材
綿素材には品質に基づいた階級があり、主に綿糸の「細さ」と「長さ」が重要です。
より細い綿は軽量でなめらかな肌触りとなり、より長い綿は接続箇所が少ないことで軽量、また塵も出づらい生地ができあがります。
側生地の質を表す基準として、1インチ(約2.5cm)の間に何本の綿糸が織られているかという「打ち込み本数」があります。
この打ち込み本数が大きいほどより細い綿糸を使用しており、より軽くなめらかな肌触りのものができあがります。
ただしあまりに打ち込み本数が多いものは、空気や水を通さず吸湿性などに問題が出るようです。羽毛布団に使用される綿素材は打ち込み本数が200本程度のものまでが多くなっています。
以下で代表的な綿生地を挙げていきます。
2-1-1. 60サテン(60本ブロード)
打ち込み本数が60本の綿生地です。比較的安価な製品に多く使用されており、羽毛布団には若干重い素材といえるかもしれません。綿らしい素材感が好みという方も。
2-1-2. 80サテン(80本ブロード)
打ち込み本数が80本の綿生地です。60サテンより軽量で、ロイヤルゴールドラベル以上の羽毛布団に多く使用されています。
2-1-2. 超長綿120サテン(120本ブロード)
「超長綿」というのは読んで字のごとく「超」「長い」「綿」を使用しているということです。
より長い綿を使用していることで、軽く、塵の少ない生地になります。高級羽毛布団に使用されることが多いです。
2-2. 綿+合成繊維
技術の発達により、ポリエステルなど安価で快適な合成繊維が多く存在します。
合成繊維は綿に比べて軽くシワになりにくいものが多く、その点では羽毛布団に適している場合が多いことも。
一方ですべりやすいという特徴も持っているため、カバーがずれたりといったマイナスとなる点も否めません。
一般的な羽毛布団の生地としては、単純な綿と合成繊維を組み合わせたものと、綿と合成繊維のいいとこ取りをした「ハイブリッド新合繊」というものがありますので、次に詳しくご紹介いたします。
2-2-1. 一般的な綿+合成繊維
綿と人工素材である合成繊維を組み合わせて作られた生地で、軽くて比較的安価です。多くの生地は綿が30%~50%程度使用されています。
綿60サテンなど重い生地を使用するよりもかえって羽毛布団に合っているともいえますので、価格的にも魅力を感じる方は選択肢として良いかと思います。
カバーが多少ずれやすかったりするなどの点だけは抑えておいてください。
2-2-2. ハイブリッド新合繊
上記の一般的な綿と合成繊維のいいとこ取りをした生地です。
この生地は、特殊な織り方をすることによって外側に露出している部分を綿で、内側の部分は合成繊維となるようにできています。
これによって肌触りや質感よく、またカバーがずれるなどもない上に軽量な生地を実現しています。
比較的価格が高くなってしまうのが難点ではあります。
2-3. 側生地の加工
羽毛の項目では羽毛に対する加工について説明しましたが、側生地に対しても加工が施されているものが多くあります。
その代表的なものが「ダウンプルーフ加工」といい、生地からダウンが出てきてしまうのを抑えるための加工です。
ダウンプルーフ加工については「羽毛布団のダウンプルーフ加工って何?羽毛布団の購入前に抑えておきたい側生地の基礎知識」で詳しく解説しています。
また抗菌や防臭の加工を施されたものも多く出ていますので、目的や用途によってそれらの視点から羽毛布団を選択するのもひとつの手かと思います。
3.キルティング
羽毛と側生地をどのように組み合わせるのかが「キルティング」といわれるものです。これにより、実際に寝た時の暖かさが大きく変わってきます。
一般的なキルティングの構造をいくつかご紹介しましょう。
3-1. タタキキルト
二枚の布を単純に縫い合わせた形になっています。
耐久性に優れていること等が特徴ですが、縫い合わせた部分には羽毛が入らないため、その部分から熱が逃げていくという難点があります。
3-2. 立体キルト
タタキキルトの縫い合わせ部分にマチを作り、立体的に掛け布団のカサを出し熱を逃がしづらくした構造のキルティングです。羽毛布団で最も使われているキルティングです。
3-3. 二層キルト(ツインキルト)
羽毛布団を上下2層に分け、マチの部分がずれるように作られたキルティングです。
この構造によって立体キルトに比べ、より保温性が高くなり体にフィットしやすくなります。
3-4. 二枚合わせ(ダブルキルト)
厳密にはキルティングとはいえないかもしれませんが、ご参考までにご紹介いたします。
二枚合わせは、厚さの異なる立体キルトを2枚、取り外し可能なように組み合わせたものです。この構造によって、季節や気温に応じて羽毛布団を使用することができるのが大きな特徴です。
また組み合わせた時のマチの部分が上下でずれるように作られているため、二層キルトと同等もしくはそれ以上の保温力があります。
マス目の大きさについて
製品によってキルティングのマス目の大きさ、数が異なっています。
大きずぎると中の羽毛が偏ってしまうので熱が逃げやすい部分ができ、細かすぎると側生地の重量が増してしまうため、適切な大きさが求められます。
市販されてる製品はその点を十分考慮されているものが多いと思いますので、そこまで気にする必要はないかもしれません。
それ以上に、断面がどのような構造になっているかをしっかり認識することが重要です。
まとめ
今回は羽毛布団を選ぶ際の視点を「ダウン」「側生地」「キルティング」の3つの面から解説しました。
考えなくてはいけない点が多く、ちょっと面倒だな…と感じた方もいらっしゃるかもしれません。ただ、そこが羽毛布団の難しさであり、派手な宣伝文句などにより間違った選択をしてしまう原因でもあるのかもしれません。
結論としては
・どのくらいのダウンパワーのダウンが
・どのくらい入っているのか
・洗浄や加工はしっかり行われているのか
そして
・どのような素材が、どのような構造の側生地に入っているのか
を最低限抑えておくことで、羽毛布団を選ぶ際の指標となります。
宣伝文句や派手な写真、営業トークだけに騙されることなく、長い間快適に使用できる羽毛布団を見つけましょう!