心身の健康をおびやかす「睡眠負債」とは
「睡眠負債」という言葉をご存知でしょうか。
睡眠負債とは、スタンフォード大学の睡眠学者「ウィリアム・C・デメント教授」により提唱された言葉。数日以上の睡眠不足が借財のように積み重なり、健康に悪影響を及ぼすおそれのある状態を指すそうです。
睡眠負債と睡眠不足の違い
睡眠負債は睡眠不足とは異なります。
一時的に仕事が多忙で、短期間充分な睡眠をとれていないという状態は睡眠負債とはいえません。しかし日々の睡眠不足が何日も積み重なり、数日から数週間の単位で慢性化することで睡眠負債に陥ってしまいます。
睡眠負債の問題点は
睡眠負債はすぐに返済することはできず、いわゆる「寝だめ」のような睡眠貯金をしておくことができません。
お休みの日に平日より2〜3時間多く眠ったくらいでは返済できず、それ以上寝だめしてしまうと平日の生活リズムをも崩すことになりかえって健康を損ねてしまうのだそう。
また、睡眠負債の問題点は本人が睡眠負債である自覚がないケースが多いことも挙げられます。
睡眠負債はその名の通り「負債」と名が付いているので、本当の借金のように知らず知らずのうちに負債が膨らんでしまう、とても恐ろしい状態といえるでしょう。
睡眠負債による健康被害
現代人の多くが抱えている睡眠負債。睡眠負債を抱えると一体どんな健康被害が考えられるでしょうか。
睡眠負債が続くと疲労回復ができないため、集中力がどんどん落ちていきます。
睡眠負債が数週間続くことで自律神経のバランスの乱れ、数ヶ月続くとホルモンバランスが乱れ疲労回復が遅くなり、これが数年続くとメンタル不調を引き起こす要因になるともいわれています。
数週間続くと・・・自律神経の乱れ → 高血圧、不整脈 まず、自律神経のバランスが崩れてきます。交感神経が優位となり、高血圧や不整脈が出現しやすくなります。
数ヶ月続くと・・・ホルモンバランスの乱れ → 肥満、糖尿病、脂質異常 眠っているときに多く分泌される成長ホルモンが減り、変わってストレスホルモンである副腎皮質ホルモンが多く分泌されるようになります。疲労回復が遅れ、免疫機能が低下しやすくなります。さらにインスリン抵抗性が上がり、また食欲を制御するレプチンの分泌が抑制されるため、肥満や代謝異常が進みます。
数年続くと・・・精神神経系の異常 → 抑うつ セロトニンやカテコラミンなど、生命維持に必要な物質が枯渇するようになり、抑うつ状態を引き起こしやすくなります。
睡眠負債を返済するには
睡眠不足がまるで借金のように積み重なってしまう睡眠負債。
睡眠負債を返済するにはできるだけ負債を貯め込まず、十分に眠る生活を3~4週間ほど続けて睡眠時間を確保しながら負債を解消していくことが基本。
ベストな睡眠時間は人によって異なりますので、まずは自分に必要な睡眠時間がどのくらいかを知ることが大切です。
睡眠記録で自分の眠りを可視化
睡眠記録は2週間分ほどの自分の睡眠時間を記録する、いわば日誌のようなもの。毎日何時に寝て、夜中に何回起きて、何じに起きたかを記録しましょう。
目安としては休日に平日よりも2時間以上多く眠っているようであれば負債が溜まっている状態といわれています。
この睡眠記録で自分に必要な睡眠時間を知り、負債分を日々分割払いする睡眠ペースを確保していく必要があるということです。
まとめ
睡眠負債は寝だめで一朝一夕に完済できるものではありません。また睡眠負債であることに自覚がない場合がありますので、気が付いたら健康に悪影響を及ぼしていた……ということも考えられます。
午前中にすでに眠くなる、昼間眠気を感じてウトウトしてしまう、夜あっという間に寝落ちしてしまうなどといった症状があれば、まずは睡眠記録をつけてみることをおすすめします。
そして睡眠負債を抱えていると判断された場合には、毎日少しずつ「+30分」「+1時間」と睡眠を増やし負債を返済していけるように生活習慣や睡眠環境を見直す工夫が必要でしょう。
参考文献
ウィキペディア(睡眠負債)
医療法人橘甲会(睡眠負債は借金より怖い?! ~睡眠不足について その2~
日経Goody(長時間労働はなぜ悪い? 医師が明かす睡眠不足の怖さ)