羽毛布団をクリーニングするタイミングとお店選びの注意点

2022年3月21日

羽毛布団をクリーニングするタイミングとお店選びの注意点

暑さも本格的になり、寝具も夏仕様にチェンジした頃かと思います。春先まで毎日使用していた羽毛布団、キレイな状態で保管しているでしょうか?

しばらく洗っていない羽毛布団は、カバーの洗濯や日干しをしていても溜まった汚れが気になるもの。毎日使う布団は表面的にはキレイに見えても、やはり中の羽毛は少しずつ汚れを吸着しています。

冬シーズンが始まる直前にクリーニングすると使い始めが心地よく感じられるかもしれませんが、保管中はどうしても羽毛布団自体の通気が悪くなり、布団の汚れが匂いの原因になることも。また、時間が経つことで汚れが定着することを考えると、冬用の寝具から夏用の寝具に変えた今こそがクリーニングのチャンスといえるでしょう。

一般的にどのくらいの間隔でクリーニングに出すのが良いのでしょうか?

また、ひと口にクリーニングといっても幅広く請け負うクリーニング店から、布団丸洗い専門といった看板を掲げているところまで洗い方や料金はさまざま。意外と知られていませんが、実はどんな業者を選ぶかによって羽毛布団に与えるダメージや仕上がりには大きな違いがあるのです。

いつ、どんなタイミングで、どのような業者を選んだら良いのか、羽毛布団のクリーニングにまつわる疑問や注意点について解説します。

1.クリーニングの適切なタイミング

羽毛布団のクリーニングの間隔については、羽毛の品質や日頃のケアに加え個人的な衛生面での感覚も左右される部分も大きいところ。

今回は、お布団の持つ快適な機能を維持するという観点から、クリーニングのメリット・デメリットをふまえ、適切なタイミングを解説します。

1-1 クリーニングのメリット

羽毛布団は吸湿・放湿の両方に優れているため、意外と手間をかけなくても快適さが保たれる寝具。きちんとカバーを掛けて、こまめにカバーの洗濯と月1回程度の布団干しをおこなっていれば、数年使用しても布団自体に大きな汚れを感じることはないでしょう。

しかし、外見が汚れていなければ中身も汚れていないのでしょうか?

答えはNOです。確かに、本来持っている高い放湿性や日干しによって汗に含まれる水分は発散できます。しかし、寝ている間に付いてしまった皮脂や汗からの塩分、また埃やチリなどは発散されません。

それらは時間をかけてゆっくりと布団の中に浸透し、保温性の鍵を握るダウンボール(タンポポの種子の綿毛のような形をしている羽毛)に少しづつ絡み付いていきます。

ダウンボールが汚れでコーティングされるにつれ、ふんわり放射状に広がっていた羽枝が次第にくっつき合い、ふくらみを失ってゆきます。これが、汚れの蓄積によって起るへたりと保温性低下の原因です。

こういった機能の低下を解消するために、適度なクリーニングが効果を発揮するのです。

1-2 クリーニングのデメリット

日々蓄積する汚れを考えると、頻繁にクリーニングしたいという方もいらっしゃるでしょう。しかし、羽毛布団のクリーニングでは汚れを落とす効果と同時に、羽毛や側生地を傷めるというデメリットも背中合わせにあることをふまえなければなりません。

本来、動物の羽である羽毛は油分を含んでいます。羽毛の洗浄工程において余分な油分は取り除かれますが、吸湿発散性や羽枝の保護のために、わずかな油分は残して仕上げています。クリーニングによりこの油分が落とされるとダウンボールが壊れて小さくなり、かさ高や保温性が低下します。

また、羽毛を包んでいる側生地はわずかな隙間からダウンが飛び出さないようにダウンプルーフ加工(目つぶし加工)を施し、最小限の通気性のみ保たれるようになっています。洗浄から乾燥までの工程を繰り返すことで織が弱くなると、通気性が大きくなった生地から羽毛が飛び出すようになってしまい、布団の寿命を縮めることにつながります。

1-3 どれくらいの間隔がベスト?

ではメリットとデメリットをふまえた上で、どれくらい使ったらクリーニングすればよいのでしょうか?

布団へのダメージリスクを考えるとなるべく回数は少ない方がよいのですが、汚れが蓄積した期間が長すぎると、次第に酸化して落ちにくくなります。また、汚れは経年劣化の進行を早めるため、側生地が傷んでクリーニング自体が難しくなる場合もあります。

日頃のケアを適切におこなっていることを前提としたうえで、総合的に判断すると、一般的な羽毛布団のクリーニングの目安は3〜5年に1回程度がベストです。

1-3-1 個人差はふまえて

カバーを掛けずに使用している方は、側生地が吸い取った汚れがそのまま羽毛に浸透します。ワンシーズンの使用で目立つ汚れが発生しクリーニングが必要になってしまいますので、必ず日頃からカバーを掛けて使用して下さい。

また汗かきの方や皮脂の分泌が多い方、喫煙の習慣がある方は、目安よりも汚れるスピードが早くなりますので、1〜2年差し引いて考えて下さい。逆に、日頃からこまめにケアしている方は1〜2年プラスして考えても問題ないでしょう。

1-3-2 こんな状態を感じたら

期間はあくまでも目安です。手持ちの布団の状態が、

・干してもふくらみが回復しなくなってきた

・布団が冷たく感じる

・匂いが気になる

・側生地の襟元などに目立つ汚れがある

などの状態であれば、クリーニングのタイミングと判断して下さい。

2.クリーニングの正しい知識

羽毛布団をクリーニングすることで多少ダメージリスクも伴うこともわかりました。大切な羽毛布団ですので、どんなお店に出すかについてはしっかりと見極めたいもの。

しかし残念ながら、全てのクリーニング店が羽毛布団に関する豊富な知識を持っているわけではないようです。

専門的知識のない業者に出してしまい、思ったような仕上がりにならずトラブルになるケースもあります。長く大切に使いたいと考えるのであれば、羽毛布団専用で洗い方にこだわっているお店を選ぶことが重要です。

羽毛や側生地を傷めないクリーニング方法について知識を深め、適切な業者を選ぶ手がかりとなれば幸いです。

2-1 洗濯表示に「ドライ」とあるけれど・・・

洗濯表示「ドライ」

羽毛布団についている洗濯表示において、製造メーカーが表示しているクリーニング方法の多くは「ドライクリーニング」となっています。しかし、これは家庭での洗濯によって生じるトラブルを避けるため、専門店でのクリーニングを薦める意味合いで使用されているのが実情です。

昔は、羽毛を傷めるため羽毛布団は水洗いできないという考えが一般的でした。しかし、ここ数十年で羽毛布団のクリーニング技術は格段に向上し、ダメージを最小限に抑えて水で洗うふとん丸洗い専門店が登場しました。

実際、ドライクリーニングと丸洗い(水洗い)では、どちらが羽毛布団に適しているのでしょう?

2-2 実はドライクリーニングは不向き!?

ドライクリーニングは、石油系の溶剤を使用して洗うため汗などに含まれる水溶性の汚れは落ちないばかりか、羽毛の表面を保護しているわずかな油脂分を落とすことになるので羽枝が乾燥して枝羽になり、ダウンボールが壊れる原因にも。繰り返すとどんどんかさ高が減り、暖かさを失ってしまいます。

また、空気を含んだ布団の中まで溶剤が浸透しにくく、気になる匂いや羽毛の汚れがとれない場合もあります。

2-3 よく聞く丸洗い(水洗い)ってどんな方法?

丸洗い(水洗い)

丸洗いとは、その名の通り布団をまるごと水で洗うクリーニングです。

丸洗い(水洗い)のメリットは、寝具の汚れの9割を占めるといわれる水溶性の汚れ(汗・皮脂・尿・血液・フケ・垢・埃など)をスッキリと落とせることと、布団専用のプログラムとして開発されているため布団に合った洗い方が導入されているお店が多いということです。

ウェットクリーニング表示

そもそも羽毛は水鳥の羽ですので、水洗いによるダメージはほとんどありません。

クリーニング店による特殊な技術で行う洗いから仕上げまでを含む水洗い=ウェットクリーニングの表示(上記の、Wが丸で囲まれているマーク)があるものは水洗いクリーニングが可能です。

2-3-1 ウォッシャブルな羽毛布団

最近では肌掛け布団や合い掛けなど、羽毛の充填量が少ない薄手の羽毛布団では家庭用の洗濯機にも入るため、ウォッシャブル表示のものが増えてきています。

ウォッシャブル加工とは、乾燥しやすいように側地や羽毛が撥水処理されたもの。未処理の物に比べると、水洗い後の乾燥性が格段に向上し容易になっています。クリーニングのコストがかからず、自宅で手軽に洗えると人気です。

3.品質重視のお店選びのポイント

では、実際にクリーニングに出す際のお店の選び方をみてみましょう。

羽毛に特化した洗い方を採用している専門店から、効率よりも仕上がり時の品質を重視しているお店まで実にさまざまですので、お店を選ぶためのポイント項目をまとめてみました。

・単品で、個別に水洗いしているか

・すし巻にして洗う、低回転で時間をかけて洗うなど、羽毛の片寄りや側生地に配慮した洗い方を採用しているか

・羽毛布団専用の中性洗剤で洗っているか

・側生地の劣化防止や羽枝の保護のための加工剤を加えているか

・水気を含んでいる段階では平置き乾燥機、仕上げに羽毛をほぐす回転式の乾燥機を使用するなど、布団に負荷がかからない工程で乾燥しているか

・寝具店やメーカーなど、専門知識のある業者(またはそれらとタイアップして)がおこなっているか

・羽毛布団に特化したプログラムを採用しているか

ご自身の目的や仕上がりの希望、予算、こだわりにもよりますが、これらはお店選びの基準となります。ぜひとも参考にしていただきチェックしてみてください。

4.クリーニングの気になるあれこれ

品質以外にも料金やかかる時間、便利なサービス、注意点などクリーニングにまつわる気になることはさまざまです。よくある疑問をまとめてみました。

4-1 料金の相場は?

クリーニング料金の相場は?

布団丸洗いの価格の相場は3,000円〜8,000円台です。

サイズを問わない料金設定のお店や、枚数が増えるごとに割安になったり送料が無料になったり、というサービスがあるお店も。

また、布団1枚あたりの価格設定があるところと、指定パック1個あたりで枚数に関わらず定額の料金設定のところがあるようです。出したい布団の数によってどのくらい割安になるのか、比較検討してみてください。

4-2 どれくらいの期間がかかる?

シーズン中にクリーニングしたいと思った時などは、どれくらいの期間で戻ってくるのかが気になるところです。

おおよその目安として、1〜2週間が平均的です。長いところでは、3週間〜1ヶ月かかるお店もあります。

4-3 丸洗いできない羽毛布団もあるの?

側生地がシルクの羽毛布団は水洗いできません。

また、縫い目が接着剤仕上げのノンキルト加工の羽毛布団は、接着剤がはがれて中の羽毛が片寄る可能性があるため洗えません。

ほかにも側生地にほつれや破れがある場合も洗浄中に羽毛が飛び出たり、破れが広がる可能性があるため丸洗いは難しいと考えてよいでしょう。

4-4 落ちない汚れはある?

ドライクリーニングでは油汚れや埃は落とすことができますが、汗汚れなど水溶性の汚れを落とすことはできません。

また、10年ぐらい使用した羽毛布団をみると、襟元の方に濃い黄ばんだ汚れがついていることがあります。これは皮脂や汗の成分が浸透した上に、経年変化で汚れが酸化した状態。

ここまでくるとクリーニングに出しても落ちない場合があります。そんなときは買い替えかリフォームをおすすめします。

4-5 インターネットのクリーニングサービス

布団丸洗いの専門業者が近くにない場合、インターネットで申し込むクリーニングもあります。

ホームページより申込みをおこなうと、布団を梱包するキットが送られてきます。中に布団を入れて、所定の事項を記入し送ると、約1週間から10日ほどで仕上がって戻ってくるという流れです。

大きな布団をクリーニング店に持ち込む手間も省け、専門店としての豊富な知識に加え全国から依頼を受けている多数の実績があるので、安心できる非常に便利なサービスといえるでしょう。

ただし顔が見えないやり取りになりますので、必ず利用者の口コミはチェックしてから業者を選定しましょう。

4-6 専門店ではないけれど・・・身近なお店に出すときの注意点

「インターネットで見知らぬ店に出すのは抵抗がある」という理由でお近くのクリーニング店に依頼する場合は、専門店ではない分羽毛に関する知識が不足している場合があります。

トラブル回避のために、水洗いなのかドライクリーニングなのか、気になっている汚れが落ちるかどうか、クリーニング後の匂いはどうか…など、後々トラブルにならないよう、気になる点は事前に全て相談し、確認しておきましょう。

また、主に衣類のクリーニングを請け負っているお店では、布団クリーニングを受けつけていても自社ではなく丸洗いの設備が整った業者へ外注している場合があります。

料金もやや割高になったり、時間が少し長めにかかることは想定しておきましょう。

5.羽毛布団のクリーニングまとめ

いかがでしたか?羽毛布団のクリーニングは頻度が少ないため、意外と知らないことが多かったのではないでしょうか。

これまでの内容を簡単にまとめると、

・一般的な羽毛布団のクリーニングの間隔は3〜5年に1回程度

・数年使った羽毛布団のクリーニングは、水で洗う丸洗いが適している

・丸洗い(水洗い)は、羽毛布団に特化した洗い方を採用している専門店を選ぶ

・側生地がシルクやノンキルト加工の羽毛布団など水洗いできないものの場合は、ドライクリーニングを指定する

・料金の相場は3,000円〜8,000円台、平均的な期間は1週間〜2週間

・便利なインターネットでの布団クリーニングサービスもある

となります。

適切なクリーニングをおこなうと布団はふくらみを回復し、暖かさもよみがえり快適な眠りを得ることができるでしょう。羽毛布団の快適な機能を取戻すひとつの方法として、ぜひ参考にしてみてください。

ただし傷みが激しい布団や、10年以上たちクリーニングするより購入し直した方がコスト的に良さそうな場合は、買い替えを検討することも一つのアイディアといえるでしょう。