羽毛布団の側生地に詳しくなろう!信頼できる側生地製造メーカーは?

2022年3月10日

羽毛布団の側生地に詳しくなろう!信頼できる側生地製造メーカーは?

羽毛布団は羽毛の品質だけでなく側生地選びもとても重要です。質の良い羽毛を使っていても側生地の性質によっては羽毛の通気性、放湿性を十分に生かせないことも。今回は羽毛布団の側生地について調べてみました。

羽毛布団の側生地の役割とは?

羽毛布団は当然ながら羽毛だけでは布団として使うことはできません。詰め物である羽毛を布で包む必要があります。この布が側生地です。

羽毛布団の側生地は羽毛の吹き出しを防ぐため通常の布よりも高密度に織られています。側生地の役割について考えてみました。

・羽毛の吹き出しを防ぐ

羽毛布団の側生地は羽毛の吹き出しを防ぐため、高密度に織られています。さらにダウンプルーフ加工をおこなっている場合もあります。

これにより長年使用しても詰め物の容量が減らず、快適に使うことができます。

ダウンプルーフ加工とは?

高密度に織られた生地を高熱スチームで蒸しながらローラーに通し、圧力をかけて生地の目をつぶす加工方法や、化学薬品でコーティングして目をふさぐ方法があります。

これにより羽毛の吹き出しをさらに防ぐことができますが、通気性は未加工の生地より劣ります。ダウンプルーフ加工を施さなくても羽毛が吹き出しにくい側生地を使った羽毛布団が理想ですが、現在、国内の市場に出回っている一般的な羽毛布団の側生地のほとんどにダウンプルーフ加工が施されています。

詳しくは「羽毛布団のダウンプルーフ加工って何?羽毛布団の購入前に抑えておきたい側生地の基礎知識」をご覧ください。

・汚れを防ぐ

側生地がしっかり作られていることで、詰め物である羽毛が直接肌に触れません。就寝中の汗やアカなどの汚れが羽毛に付着しにくく、また、羽毛布団の側生地は高密度なのでダニなども侵入しにくいです。

・保温性を高める

側生地に羽毛を充填すると側生地の内部で羽毛のない部分に適度に空気の層が生じます。これにより保温性を高めることができるのです。

どんな側生地が羽毛布団にふさわしい?

羽毛布団にふさわしい側生地とはどのような生地なのでしょうか。その特徴についてまとめてみました。

・吸放湿性にすぐれた素材であること

吸湿・放湿性にすぐれた羽毛の性能を最大限に生かすには側生地も吸湿・放湿性がよい「羽毛の呼吸を妨げない」素材であることが重要です。

・通気性が良い素材であること

羽毛は通気性にすぐれており、布団の中の湿度を快適に保ってくれるという性質があります。

しかし、通気性の良くない側生地ではその機能を損ない、せっかくの羽毛の良さを発揮できません。就寝中に布団の中がムレて寝苦しさを感じることもありますので、羽毛布団の側生地には通気性の良い素材を選ぶことが重要です。

・耐久性にすぐれた素材であること

羽毛布団は使用期間が比較的長い寝具です。そのため側生地には耐久性も求められます。強度があり、長年の使用に耐えられる生地で、かつ吸湿・放湿・通気性にもすぐれたものが理想です。

・軽量であること

羽毛布団の側生地に使われる高密度に織られた布は、それだけで普通の布よりも重みを感じる場合があります。布団の重さは寝苦しさの原因にもなってしまいますので、なるべく細い糸で織られた軽めの側生地を選ぶようにしましょう。

・ドレープ性が良いこと

ドレープ性とは布が体にまとわりやすいことを言います。言い換えると生地が体にフィットするかどうか、ということです。

ドレープ性が良い生地は体をしっかりと包み込み、布団と体の間に隙間を作らず、布団の中に冷たい空気が入り込むのを防ぐことができます。ただし、あまりドレープ性が良すぎる生地は逆に体に密着しすぎて、睡眠中にうっとおしく感じたり、寝返りを妨げてしまったりすることもありますので、適度なドレープ性を持った側生地を選ぶのがおすすめです。

側生地の風合いや性質は何で決まる?

どのような側生地が羽毛布団にふさわしいか、お分かりいただけたでしょうか。それをふまえて側生地の性質や風合いを決める、素材、糸の種類、糸の太さ、織り方などについて詳しく見ていきましょう。

①素材

側生地の風合いや性質を決める最も重要な要素が素材です。どんな素材を使用しているかによって側生地の性質が大きく変わってきます。

ここでは羽毛布団に使われる主な素材について解説していきます。それぞれの特徴と良い点、悪い点を知っておきましょう。

綿

綿

綿は肌触りが良く、吸湿・放湿性にすぐれているため、羽毛布団に大変適した素材と言えます。

多くの側生地に綿が使われていますが、難点は厚手の生地だと生地に湿気がたまってしまったり、ゴワゴワとしてしまったりすること。綿の側生地はできるだけ細い糸で織られた生地がおすすめです。超長綿という繊維の長い綿が使われた生地は高級側生地とされています。

最近は軽さを出すために綿とポリエステルを混紡した素材も見受けられます。軽さの面では良いですが、ポリエステルは通気性に劣り、羽毛の機能を損ないますので、できるだけ綿100%の側生地を選ぶことをおすすめします。

メリット:吸湿・放湿性が良く、布団の中を快適に保つことができる

デメリット:糸の番手(太さ)が太いとややゴワゴワとした感じがある

【超長綿とは?】

超長綿は綿花の繊維の長さが35mm以上の綿のこと。綿花の生産量のわずか3%しか生産されないため大変貴重で高級衣料品や高級寝具などに使用されます。

綿の繊維が長いと繊維がより細かくなり、肌触りがなめらかになります。また、繊維が長いので細くても強度のある糸を作ることができ、薄くて丈夫な生地を作るのに適しています。シルクのような光沢があるのも特徴です。

合成繊維

合成繊維

合成繊維を使った側生地もよく見かけます。その多くはポリエステル100%や綿とポリエステルが混合された素材です。

ポリエステルは綿に比べると軽量でつるりとした肌触りが気持ち良いですが、通気性ではどうしても綿に劣ります。睡眠中にかいた汗を放出できず、ムレの原因となってしまいますので、布団カバーを通気性を損なわない綿100%のものにするなど、工夫をすることをおすすめします。

また、静電気が起きやすくホコリを吸い寄せてしまいますので、アレルギーのある方は注意が必要です。

メリット:軽くて安価

デメリット:通気性が悪くムレやすい。静電気が起きやすく、ホコリを吸い寄せる。

【リヨセル(テンセル)とは?】

最近ではリヨセルを側生地に使った羽毛布団もよく見かけます。リヨセルとはユーカリを原料とする素材で、木材を溶剤で溶かしてろ過した後、不純物を取り除き、これを細かい穴から押し出して紡糸します。溶剤は回収して再利用するため地球にやさしいエコロジカルな素材として近年注目されています。

繊維の断面が円形をしており強度が高く、風合いはやさしくやわらかで、光沢があり、吸湿・放湿性が高いという魅力があります。ちなみに「リヨセル」と「テンセル」は同じ繊維です。「テンセル」はブランド名で「リヨセル」は総称です。

シルク

シルク

シルクは、蛾の幼虫である蚕の繭から作られる天然素材です。繭は幼虫を外敵や自然から守るものですので、シルクには繭の中の湿度や温度を快適に保つ機能があります。

手触りのなめらかさと光沢が魅力で、吸湿・放湿性も高いです。また、天然繊維なので静電気も起こりにくいです。羽毛布団の側生地にこれほど良い素材はありませんが、シルクは繊細で摩擦に弱いのが難点。残念ながら頻繁に長く使う布団の側生地にはあまり向いておらず、現在はシルク100%の側生地は非常に少なくなっているようです。

メリット:肌触りがなめらか。吸湿・放湿性が高い。

デメリット:高価すぎる。繊細で摩擦に弱く耐久性に劣る。

②糸の種類

一般的に糸は綿やポリエステル綿などの繊維がばらばらになってほどけないよう、ねじって撚りをかけて作られています。ねじりをかけることで強度のある一本の糸になり、製品を加工できる糸となります。

撚った1本の糸のことを「単糸」と言います。単糸を2本ねじり合わせてたものを双糸といい、単糸よりも太く均一な糸になります。

単糸よりも双糸の方が強度があり、ハリやコシのある生地に仕上がります。糸を2本合わせているため耐久性もあります。

羽毛布団の側生地には、その素材の特徴に合わせたさまざまな糸が使われています。たとえば繊維の長さが長い超長綿は2本の単糸を合わせた双糸でも極細の糸を作ることができ、その糸で作った生地の仕上がりはしなやかになります。

また、シルクの場合は長繊維の「生糸」は数本撚り合せて双糸にして使い、生糸を取った後に出るくず繭などの短繊維は撚り合せて「絹紡糸」として使います。

羽毛布団の側生地には、長期間の使用に耐えうる耐久性と強度がありながら、ゴワつきのない肌触りの良さや、軽さが求められます。つまりより細くなめらかで強い糸が側生地にふさわしい糸と言えるのです。

③糸の太さ(番手)

前項、糸の種類の中で少し触れましたが、糸の太さも側生地の風合いを決めるとても重要な要素です。

糸の太さのことを「番手」と言い、30番手、80番手…140番手などと数字で表記します。数字が大きくなるほど細い糸を示し、100番手以上の糸になると極細糸と言われます。番手の細い糸ほど加工が難しく品質の良い原料が必要になり、高級品となります。

ちなみに単糸を2本合わせて撚った双糸は倍の太さになりますので、50番単糸と100番双糸は同じ太さです。「50s」、「100/2s」などと表記されます。

羽毛布団の側生地の場合は60番手単糸、80番手単糸が一般的です。それより細い100番手以上の生地の場合は高級品となり、よりしなやかな側生地になります。(加工に手間のかかる双糸を使った側生地になるとさらに高価になります)

逆に太い40番手の生地になると、安価で手に入るというメリットはありますが、ごわつきやかたさを感じることがあります。

④織り方

生地の織り方は風合いや肌触りだけでなく、羽毛の機能を生かすためにもとても重要です。

生地は縦に通している「経糸(たていと)」に「緯糸(よこいと)」を横方向にくぐらせるように通して作ります。そのぐぐらせ方の違いが織り方の違いとなります。

生地の織り方は「平織(ブロード)」「綾織り(ツイル)」「朱子織り(サテン)」の3種類が基本です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

平織(ブロード)

経糸に緯糸を交互にくぐらせる織り方です。経糸と緯糸が接する「組織点」が隣り合っているため、糸が動きにくく安定した生地になり、しっかりとした硬めの風合いになります。摩擦に強く耐久性が高いのが特徴です。通気性にも優れます。

軽くて丈夫なのが平織のメリットですが、番手の小さい太い糸を使った平織はごわごわして肌触りがあまり良くありません。ただし、「ローン」とよばれる番手の大きな細い糸を使った平織は滑らかな肌触りになり、最高ランクの羽毛布団には平織が使われることが多いです。

綾織(ツイル)

経糸を2本(3本)、緯糸を1本交差させる織り方です。綾目と呼ばれる斜めの畝が現れるのが特徴です。平織と比べると緯糸が飛んでいますので、糸が動きやすくなり、その分やわらかくしなやかな生地になります。

ただし糸の浮きがあるため、平織よりも糸の密度を高めなければ、羽毛が吹き出しやすくなってしまいます。

朱子織(サテン)

4本以上の経糸を飛ばして1本の糸を交差させる織り方です。糸の多くが織られずに表面に出ていることになるので、光が反射する面が多く光沢のある生地になります。また、糸が動きやすいため、とてもソフトな風合いです。

ただし綾織よりもさらに糸が浮いているため、糸の密度を高めて羽毛の飛び出しを防ぐ必要があります。また、浮いている糸が引っかかりやすくデリテートというデメリットがあります。

朱子織(サテン)の側生地は光沢が出ることから高級羽毛布団によく使われますが、高密度に織る必要があることから重くなることがデメリットです。

⑤打ち込み本数

打ち込み本数とは1インチ(役2.5cm)四方の中に織り込まれている経糸と緯糸の本数のことです。つまり、この本数が多いほどより密度が高く、柔らかく肌触りなめらかな生地になります。また、打ち込み本数が多いほど高い技術が必要になるため、価格は高めとなります。

230本を必要最低限の打ち込み本数とし、高級品になると400本を超えるものもあります。

糸の番手や織り方の他に打ち込み本数で表示されている生地もありますので、注目してみるといいでしょう。

信頼できる羽毛布団用側生地製造メーカーは?

蔭山株式会社

羽毛布団用生地の開発、製造を行っている国内トップメーカー。品質基準を設けて品質の高い側生地を製造しています。

HEFEL 

オーストリアのベッドリネン製造メーカー。細番手、高密度、軽量の生地の生産を得意としています。羽毛の機能を最大限に生かすため、生地に樹脂のダウンプルーフ加工をおこなわず、通気性の良さを確保した側生地を製造しています。

まとめ

羽毛布団の側生地について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

側生地は、羽毛の吹き出しを防ぎながら、通気性も確保しなければならなりません。どちらかを優先するとどちらかを妥協しなければならなくなるという、相反した課題があるということが分かりました。今回の内容をまとめておきます。

・羽毛布団の側生地には羽毛の吹き出しを防ぐために高密度に織られた生地が使われている

・羽毛布団の側生地は「吸湿・放湿性」「通気性」「軽さ」「耐久性」「ドレープ性」に注目して選ぶとよい

・羽毛布団の側生地の性質や風合いは「素材」「糸の種類」「糸の太さ(番手)」「糸の織り方」「打ち込み本数」で決まる

ぜひ側生地選びの参考にしてみてください。