羽毛はどうやって洗浄するの?知っておきたい羽毛布団の基礎知識

2022年3月21日

羽毛はどうやって洗浄するの?

羽毛の洗浄は羽毛についた汚れや臭いを取り除くだけでなく、へたってしまった羽毛をふっくらとよみがえらせることにもつながる重要な工程です。

羽毛がどれだけきれいに洗浄されているかは、羽毛布団の品質に大きく関わるのです。今回は羽毛の洗浄について解説しましょう。

羽毛の洗浄が不十分だとどうなるの?

まずは羽毛の洗浄が足りないと起こりうる問題について知っておきましょう。

・嫌な臭いが発生する

羽毛には汚れや水鳥の油分が付着しています。洗浄が足りないと、この汚れが残ったままになってしまい、嫌な臭いが発生してしまいます。特にダックダウンは油分が多く、洗浄が足りないと臭いやすい傾向にあります。

・保温力に影響が出る

洗浄が足りないと羽毛に付着した細かなゴミやホコリ、小さすぎるダウンやフェザーがしっかりと取り除かれません。ダウン率(羽毛の割合)に影響が出てしまい、十分な暖かさを保てない羽毛布団になってしまいます。

羽毛の洗浄工程を知りたい!

羽毛はどのように洗浄するのでしょうか。羽毛の洗浄工程について調べました。

①除塵

除塵機で羽毛に付いたゴミやホコリ、小さすぎるダウンやフェザーを取り除きます。最初にしっかりと不純物を取り除くことで洗浄効果を高めます。

②洗浄・脱水

羽毛用の洗浄機で油脂汚れや土汚れを落とします。しっかり洗ってホコリや臭いの発生を防ぎます。洗浄後、脱水機で脱水をおこないます。

羽毛は洗剤で洗うの?

羽毛の性質に合わせた専用の洗剤を特別に調合して洗浄に使用しているという業者もありますが、地下水や湧き水、天然水などのみで羽毛を洗っている、という業者が多いようです。

湧き水や天然水は水の分子構造が普通の水よりも細かく、汚れが落ちやすいためです。洗剤を使わなくても羽毛に付着した細かな汚れを落とすことができ、さらに温水にすることで浸透性も高まり、小羽や羽枝の間に入り込んだ汚れまで落とすことができます。

また、羽毛の自然な油分を落としすぎないので、羽毛本来のふっくらとした風合いが残ります。

③乾燥

約150℃ほどの高温の熱風を羽毛に当てて乾燥させます。しっかりと乾燥させることで、羽毛の繊維が開いて空気をたっぷり含んだふわふわの羽毛に仕上がります。高温乾燥は滅菌や消臭効果もあります。

④冷却除塵

高温乾燥させた羽毛を冷まし、まだ付着しているごく細かなホコリを取り除きます。冷却することで羽毛のタンパク質臭を取り除くこともできます。

⑤選別

最後にダウン(羽毛)とフェザー(羽根)を選別します。何層かに階層になった部屋の一番下から風を送り込んで、羽毛を吹き上げます。

その時、より軽いダウンは上の部屋に入り込み、重いフェザーは上まで吹き上がらずに途中で落下して下の部屋に入ります。上質な羽毛ほど空気をよく含んでより高い位置まで吹き上がります。

洗浄度合いの目安はあるの?

日本では「羽毛がどれだけきれいに洗浄されているか」(清浄度)について定められた規格があります。

清浄度は羽毛を洗った水の透明度で計測します。水度の透明度を計る透視度計で、500mm以上で満たした水を上から覗き込んで、底に書かれた十字線がくっきり見えるところまで水を抜いて、そのとき残った水の量が清浄度です。『JIS規格』ではこれが500mm以上であることが求められています。

日本で洗浄された羽毛の場合はこの清浄度をクリアしているものが多いですが、海外で洗浄して輸入された羽毛の場合は、この基準を満たしていないものもありますので注意が必要です。

きちんと洗浄された羽毛が使われているか見極める方法は?

消費者である私たちが羽毛布団の羽毛がきちんと洗浄されているかを知るにはどうしたらよいのでしょうか。ポイントをまとめました。

・できれば国内産の羽毛布団を選ぶ

日本の工場で羽毛の洗浄が行われているかがポイントです。

産地はヨーロッパなどの海外のものが多いですが、その洗浄や充填はどこでおこなわれているか、購入前にチェックしておきましょう。国内で洗浄・充填などの工程をおこなう自社工場をもつメーカーの製品なら安心できると言えるでしょう。

・あまりに安価な羽毛布団は要注意

コスト削減のため、洗浄工程をおろそかにしているメーカーもありますので、あまりに安価な羽毛布団は要注意です。

洗浄回数を減らしたり、コストカットのために羽毛の洗浄、充填を海外でおこなっていたりする場合があります。

羽毛布団の価格が安すぎる場合は、よく確認してから購入することをおすすめします。

・信頼できる羽毛原料メーカーを知っておく

羽毛原料の洗浄を自社でおこなっている信頼できるメーカーを知っておくといいでしょう。国内では河田フェザー株式会社や富士新幸株式会社、海外ではカウフマン・スリープウェル社の羽毛の品質が高いことで知られています。

河田フェザー株式会社

1891年創業の羽毛原料メーカー。湿度が低く、羽毛の羽枝が開きやすい気候の三重県多気郡明和町の工場で羽毛の洗浄をおこなっています。世界有数の降雨地、大台ケ原山地から流れる地下水を使用し、世界トップレベルの技術で原毛に付着した細かなホコリやアカをしっかり落とします。

富士新幸株式会社

羽毛原料の調達・羽毛布団の製造を国内自社工場でおこなっている羽毛メーカーです。山梨県都留市の地下水を使用して時間をかけてしっかりと洗浄します。

カウフマン・スリープウェル社/SLEEPWELL KAUFFMANN

オーストリアの羽毛原料メーカー。オーストリア・チロル地方の伏流水を使い、最新式の洗浄機で羽毛を洗浄しています。洗浄技術の高さはさることながら、羽毛の飼育環境が大変良いため、もともと羽毛原料に臭いや汚れが少ないそうです。海外で処理された羽毛は避けるべきとご紹介しましたが、カウフマン・スリープウェル社の製品であればしっかり洗浄された質の高い羽毛と考えて問題ないでしょう。

まとめ

羽毛の洗浄について理解していただけたでしょうか。羽毛布団を購入してから臭いに悩まされる方も少なくありません。

ご紹介した内容を参考にしていただき、十分に洗浄された羽毛が使われているのか、購入前によく確認してみてください。

・羽毛の洗浄が不十分だと「嫌な臭いが発生する」「保温性に影響が出る」など問題がある

・羽毛の洗浄工程は「除塵」「洗浄・脱水」「乾燥」「冷却除塵」「選別」

・羽毛の洗浄には分子構造の細かい天然水や、羽毛専用の洗剤が使われる

・日本では羽毛布団に使われる羽毛の清浄度は500mm以上と決められている

・しっかり洗浄された羽毛が使われている羽毛布団を見極めるには「国内産の羽毛布団を選ぶこと」「安価すぎる羽毛布団に注意すること」「信頼できる羽毛メーカーを知っておくこと」がポイント